脂質異常症(高脂血症)は動脈硬化の危険因子で、脳卒中(脳梗塞や脳内出血)の原因になります。 肥満、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、喫煙は、動脈硬化の進行を加速しますが、日常の生活習慣(食生活、運動不足解消、禁煙、飲酒の制限、ストレス解消、睡眠時間の確保など)を改善すことでかなりの効果が期待できます。
脳卒中は脳に起こる病気の中で最も多い病気です。かつては多かった脳の血管 が破れて出血する脳出血は、高血圧の治療で血圧コントロールができるようになり減少しています。その一方で、脂質異常症(高脂血症)などにより脳梗塞が増えて、脳梗塞が脳卒中による死亡の60%以上を占めています。脳卒中は日本人の死亡原因のガンと心臓疾患に続いて3位で、脳卒中の死亡率が減少している反面、麻痺や言語障害などの後遺症による入院患者や通院患者は多くなっています。脳卒中は、寝たきりや要介護の状態の原因の第1位で、全体の3~4割を占めるといわれていますし、日本人の認知症の6~7割は、脳梗塞などの脳の血管の病気(脳の血管障害)によって起こるといわれています。脳血管性認知症(脳の血管障害による認知症)の原因で多いのが多発性ラクナ梗塞です。多発性ラクナ梗塞では、小さい梗塞巣が多発して徐々に脳の機能が低下して認知症や運動障害がおこります。多発性ラクナ梗塞の基礎疾患として、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、高血圧などの生活習慣病があります。
脳卒中は、最初の症状が軽度であってもその後で急速に進行したり、症状がいったん消えた後に大きな発作を起こしたりすることも珍しくありません。一過性脳虚血発作などの脳卒中の前兆と思われる症状があるときなど「おかしいな?」と思ったら、一刻も早く病院に行くことが大切です。そして、何よりも、脂質異常症(高脂血症)など動脈硬化の危険因子になる病気治療のベースになる生活習慣を改善することが重要です。
高脂血症と脳卒中と認知症
高脂血症と脳血管障害
脂質異常症(高脂血症)は動脈硬化の危険因子で、脳卒中の原因のひとつです。脳卒中(脳血管障害)には、脳梗塞・一過性脳虚血発作・脳出血(脳内出血)・くも膜下出血があります。かつては脳梗塞よりも脳出血が多かったのですが、脂質異常症(高脂血症)などにより脳梗塞が増えて、脳梗塞が脳卒中による死亡の60%以上を占めるほどになっています。また、脳血管性認知症(脳の血管障害による認知症)の原因で多いのが多発性ラクナ梗塞ですが、その基礎疾患として、脂質異常症(高脂血症)を含む生活習慣病があります。生活習慣の改善が脳卒中予防につながります。
■脳の血管が詰まるタイプの脳卒中(脳血管障害):脳梗塞
脳梗塞は脳血栓症と脳塞栓症に大別できます。脳血栓症は、更にアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞に分けられます。
○脳血栓症
・アテローム血栓性脳梗塞 :頚動脈などの太い動脈に動脈硬化が起こり、太い血管が詰まったり、太い血管に生じたアテロームが剥がれて血流に乗ってたどり着いた脳中の細かい血管に詰まることで起こる脳梗塞です。
・ ラクナ梗塞: 脳の細い動脈が主に動脈硬化によって詰まってしまう脳梗塞で、梗塞の大きさが15mm未満のもの場合ラクナ梗塞とよびます。
○脳塞栓症:心臓にできた血栓が脳に流れついて血管を塞ぐ心原性脳塞栓症のように、脳以外の心臓の中などにできた血の固まり(栓子)などが脳の血管に詰まることで起こる脳梗塞です。血管が詰まるという点では脳血栓症と同様ですが、栓子が大きいことが多いために、太い動脈が詰まってしまいます。その結果、重症の脳梗塞を起こすことが多いです。
■脳の血管が詰まるタイプの脳卒中(脳血管障害):一過性脳虚血発作
一過性脳虚血発作とは、脳の血管が詰まっても24時間以内に回復するもので、脳梗塞の前触れ発作ともいわれる症状(前駆症状)です。一時的に、頭痛、舌のもつれ、手足のしびれ、半身マヒの症状が起こりますが、再び血液が流れると症状はなくなります。
■脳の血管が破れるタイプの脳卒中(脳血管障害):脳出血(脳内出血)
脳の血管が破れて出血をおこした状態で、大脳の深部の細い動脈が破れやく、出血した血液が脳の神経細胞を破壊します。出血した血液は脳内で血腫(血のかたまり)になり、大きくなると頭蓋内の圧力が上がって脳を重度に傷害して生命に危険が及ぶこともあります。脳出血の症状としては、いわゆる半身麻痺(片麻痺)が最も起こりやすい症状で、血腫が大きくなると意識が混濁したり昏睡状態といった意識障害を起こします。疲労、精神不安、寒冷刺激などが脳出血の引き金になることが多く、脳出血は活動中に起こることも多いです。脳出血は高血圧と関連していますから、高血圧治療が重要になります。
■脳の血管が破れるタイプの脳卒中(脳血管障害):くも膜下出血
脳は3層の膜(内側から、軟膜、くも膜、硬膜)で覆われています。くも膜と軟膜の間の動脈瘤が破れて出血(脳動脈瘤破裂)するのが、くも膜下出血です。くも膜下出血の症状としては、突然の激しい頭痛、嘔吐、意識の混濁、痙攣(けいれん)が見られますが、四肢のマヒは通常起こりません。
コレステロールとリポ蛋白
殆ど全ての細胞でコレステロール合成が行われるのですが、コレステロール合成の半分位が肝臓で行われます。肝臓にあるコレステロールの20%は食事由来(カイロミクロン由来)で、80%が肝臓で生成されたコレステロールといわれています。脂質異常症の原因になる脂質(コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸脂質といった)は水に溶けませんから、血液中に単独で存在できません。遊離脂肪酸はアルブミンと結合して運搬され、他脂質はアポ蛋白と結合してリポ蛋白という粒子状になって血液中を循環しています。リポ蛋白には、コレステロールやトリグリセライド(TG、中性脂肪の殆どがTGです)などからなる脂質の構成の違いによって幾つかの種類があり、比重や粒子の大きさが異なります。比重の軽い順から、カイロミクロン、VLDL(超低比重リポ蛋白)、IDL(中間比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、HDL(高比重リポ蛋白)に分類されます。リポ蛋白の比重が重くなる順に、粒子の大きさは小さくなります。健常者のリポ蛋白は、VLDL(超低比重リポ蛋白)・LDL(低比重リポ蛋白)・HDL(高比重リポ蛋白) ですが、脂質異常症のリポ蛋白としては、健常者のこれらリポ蛋白の他に、カイロミクロン・カイロミクロンレムナント・ミッドバンド(IDL、VLDLレムナントともいいます)・small LDL(スモールLDL、モールデンスLDL)が現われます。レムナントとは、本来血流中で素早く代謝されるミッドバンドやカイロミクロンレムナントなどのTG(トリグリセライド)が豊富なリポ蛋白のことです。これらレムナントの血流中での増加も動脈硬化の原因になります。
※脂質異常症とは、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪(トリグリセライド)の量が正常よりも多くなったり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が正常よりも少ない状態のことです。高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症があります。
善玉・悪玉コレステロール
脂質異常症の原因になっているコレステロールには、LDLコレステロールとHDLコレステロールがあります。LDLコレステロールは、多すぎると傷付いたり異常のある血管壁に蓄積して酸化して動脈硬化を促進させる原因になるため悪玉コレステロールと呼ばれ、LDLが小型になった小粒子高密度LDL(スモールデンスLDL)を超悪玉コレステロールと呼びます。小粒子高密度LDL(スモールデンスLDL)はLDLよりも小さいため血管に入り込みやすく、より酸化されやすいため、LDLよりも動脈硬化や心筋梗塞をより高い確率で引き起こします。LDLとは対照的に、HDLコレステロールは血液中の余ったコレステロールを回収して直接または間接的に肝臓でリサイクルする働きや、LDLコレステロールの酸化を防止する働きによって動脈硬化を防ぐので、善玉コレステロールと呼ばれます。LDLコレステロールが基準値より高い場合、高LDLコレステロール血症と診断されます。HDLコレステロールが基準値より低い場合、低HDLコレステロール血症と診断されます。脂質異常症としては、コレステロールの異常値を示す高LDLコレステロール血症や低HDLコレステロール血症のほかに、中性脂肪の値が正常値よりも高値を示す高トリグリセライド血症があります。
超悪玉スモールデンスLDL
悪玉といわれるLDLの粒子の大きさは一様ではありません。LDLが小型になった小粒子高密度LDL(スモールデンスLDL)を超悪玉コレステロールと呼びます。小粒子高密度LDL(スモールデンスLDL)は悪玉と呼ばれる正常粒子径のLDLと比べても、より小さいために血管に入り込みやすく、血中により長く留まって直接動脈に接する時間が長くなり、より酸化されやすい粒子です。そのため、スモールデンスLDLは正常粒子径のLDLよりも動脈硬化や心筋梗塞をより高い確率で引き起こします。脂質異常症(高脂血症)は、基本的に動脈硬化の関連で捉えられており、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を引き起こす大きな要因としてコレステロールがあり、LDLコレステロールを下げることが動脈硬化の予防になることが明らかになっています。そして、コレステロールの中でも注目されているのが超悪玉のスモールデンスLDLです。スモールデンスLDLは、耐糖能異常に伴う高トリグリセライド血症で高頻度に見られます。血中脂質検査の結果で異常を示さなくとも、耐糖能異常ではスモールデンスLDLが認められることがよくあります。インスリン抵抗性が悪いと中性脂肪を多く含むLDLの前駆体であるVLDLが作られやすく、インスリンが足りないとVLDLが大型化する過程で小型化したLDL、つまり超悪玉のスモールデンスLDLが作り出されます。また、中性脂肪が増えれば増えるほどに、LDLを小型化して超悪玉のスモールデンスLDLを生み出します。メタボリックシンドロームの人では、LDLが小型化している場合が殆どで、診断結果でLDLコレステロール値は高くなく正常値であっても、スモールデンスLDLが増加しているかもしれません。メタボと指摘されていたり、中性脂肪値が高いといわれている場合は、コレステロールの値が正常値範囲内でも、検査をして確認するのが良いかもしれません。
※スモールデンスLDL: small dense LDL、small LDL、スモールLDL、スモール・デンス・LDL
中性脂肪とは
動脈硬化を引き起こす脂質異常症の原因のひとつの中性脂肪は、余分なエネルギーが皮下脂肪や内臓脂肪として、すぐに使われずに体内に貯蔵されている脂肪です。適度の蓄積ならば問題ないのですが、過剰な中性脂肪の蓄積は肥満、脂肪肝や肝硬変、動脈硬化性疾患(動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞など)に繋がります。また、中性脂肪はコレステロールと深い関係にあって、HDLコレステロールが少なくなると中性脂肪が増加し、中性脂肪が増加するとLDLコレステロールが小型化されて小粒子高密度LDL(スモールデンスLDL)という変性LDLが作られます。これらも動脈硬化を促進する原因になります。 更には、中性脂肪が高いと血栓ができやすい状態になって、急性心筋梗塞を引き起こす危険性が高いといわれています。
中性脂肪(トリグリセライド)が基準値より高い場合、高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)と診断されます。トリグリセライド(中性脂肪)が高いと動脈硬化が進みやすく、また極端に高くなると急性すい炎の危険性があります。中性脂肪が過剰に蓄積される原因は、主に動物性脂肪や糖質の摂り過ぎです。食べ過ぎで余った脂肪や糖質を材料に中性脂肪が肝臓で作られます。日本人の場合は炭水化物にも注意が必要です。炭水化物を必要以上に摂取すると中性脂肪が増加する原因になります。食事の主食がご飯(米)だからです。余分なブドウ糖はやがて中性脂肪として蓄えられることになります。また、アルコール摂取で中性脂肪の合成が促進されますし、肥満の場合は、脂肪細胞から流出した脂肪酸を原料にして中性脂肪が合成されます。中性脂肪は食事と密接な関係にあります。食事の後は必ず中性脂肪の数値は上がりますが、ちょっとした工夫で食生活を変えることで中性脂肪の管理はできます。中性脂肪が高いといわれたら、食べすぎないこと、運動をすること、アルコールを飲みすぎないことなど、生活習慣を見直して健康的な暮らしを心掛けましょう。
中性脂肪とコレステロール
中性脂肪とコレステロールの関係は非常に大きく、中性脂肪とコレステロールのどちらも数値が高くなると動脈硬化の原因になるとして健康診断で必ず検査される脂質です。中性脂肪とコレステロールは互いに作用して増減し合う関係を保ちながら体内に存在します。コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールがありますが、中性脂肪が増えると善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールが減って結果的に悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールが増える傾向があります。中性脂肪の値が高くなると、リパーゼ(消化酵素)の活性が弱くなることで、血液中のカイロミクロンやVLDLの分解が進まなくなってHDLが作られにくくなります。更に、HDLコレステロールが少なくなると中性脂肪が増加し、中性脂肪が増加するほどにLDLコレステロールが小型化された小粒子高密度LDL(スモールデンスLDL)というLDLを生みだします。スモールデンスLDLは普通のLDLよりもサイズが小さいために血管壁に入り込みやすく動脈硬化を更に促進するコレステロールです。このように、「中性脂肪が増える→HDLが減少する→LDLが増える」という悪循環ができてしまいます。この中性脂肪とコレステロールの関係から、中性脂肪が増えなければ、HDLを増やしてLDLを抑えることができる、ということになります。中性脂肪を減らす方法は、中性脂肪を身体に溜めない生活にする、つまり食生活・運動・喫煙といった生活習慣を改めることが中性脂肪を減らす方法ということになります。
中性脂肪とコレステロールの関係から疑われる病気があります。血中脂質検査の結果で、中性脂肪とコレステロールの両方が高値の場合に疑われる主な病気は、動脈硬化、糖尿病、高尿酸血症、急性膵炎、肥満などが挙げられます。中性脂肪が高値でコレステロールが正常な場合に疑われる主な病気は、糖尿病、高尿酸血症、急性膵炎、肥満などが挙げられます。中性脂肪が正常でコレステロールが高値の場合に疑われる主な病気は、動脈硬化です。
日本人の心筋梗塞患者の場合では、コレステロール値はそれほど高くなく、むしろ中性脂肪が高値を示すケースが多いといわれています。中性脂肪の値をコントロールすることが大切です。健康診断の血中脂質検査は動脈硬化症を防止するのに欠かせません。定期的に検査を受けましょう。
脂質異常症になる病気
他の病気が原因で脂質異常症になることがあります。これを二次性脂質異常症(続発性脂質異常症)といいます。二次性脂質異常症(続発性脂質異常症)の治療は、原因疾患の治療が重要で優先されます。原因疾患を治療することにより脂質異常症が治癒または改善します。ただし、一部の原疾患は治療しても脂質異常症が十分改善しない場合があるようです。
脂質異常症を起こす病気としては、肥満や糖尿病をはじめとして、甲状腺(甲状腺機能低下症)、肝臓(原発性胆汁性肝硬変症)、副腎(クッシング症候群)、腎臓(ネフローゼ症候群、尿毒症、腎硬化症)、胆道(閉塞性黄疸)、血清たんぱく異常症などの疾患があります。薬の副作用が脂質異常症の原因になることもあります。降圧剤(利尿剤・β遮断薬)、ホルモン剤(コルチコレステロイド、避妊薬、エストロゲン)、免疫抑制剤、角化症治療薬、向精神薬などがあります。
■甲状腺の病気が原因で脂質異常症:甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は甲状腺の病気で、甲状腺ホルモンが不足して起こります。この病気が原因で、コレステロール値が上がります。橋本病が代表的です。
■肝臓の病気が原因で脂質異常症:原発性胆汁性肝硬変症
35~60歳の女性に発症頻度が高い肝臓の病気です。この病気が原因で、コレステロール値が上がります。
■副腎の病気が原因で脂質異常症:クッシング症候群
副腎(内分泌腺)から過剰にコルチゾール(ホルモン)が分泌されることで起こる病気です。この病気が原因で、コレステロール値と中性脂肪値が上がります。
■腎臓の病気が原因で脂質異常症:ネフローゼ症候群
腎臓のろ過機能が正常に働かないために、尿中にタンパク質が大量に排出されて血液中のタンパク質が減少病気です。この病気が原因で、コレステロール値が上がります。
■胆道の病気が原因で脂質異常症:閉塞性黄疸
胆汁の流出路が塞がることで胆汁の排出ができなくなって生じる黄疸のことです。この病気が原因で、コレステロール値が上がります。。
■病気が原因で脂質異常症:
○糖尿病:血糖値が慢性的に高い状態の病気です。この病気が原因で、コレステロール値と中性脂肪値(TG値、トリグリセライド値)が上がります。
○膠原病:膠原病は、関節リウマチを含む自己免疫疾患かつ結合組織疾患である病気の総称で、女性に好発します。この病気が原因で、中性脂肪値が上がります。
○血清たんぱく異常症:この病気が原因で、中性脂肪値が上がります。
脂質異常症と生活習慣
生活習慣が脂質異常症(高脂血症)を引き起こす、といっても過言ではありません。ライフスタイル(生活習慣)が原因で起こる病気は総称して生活習慣病と呼ばれます。遺伝的な体質が脂質異常症(高脂血症)の原因になることもありますが、脂質異常症(高脂血症)の原因の大部分が食生活や運動習慣や喫煙などの生活習慣です。遺伝的に脂質異常症(高脂血症)になりやすい体質が重なると、高頻度で脂質異常症を発症します。生活習慣のうちで特に影響が大きいのが食生活ですが、運動不足や喫煙も脂質異常症(高脂血症)の原因になります。脂質異常症(高脂血症)と診断されたら、脂質異常症(高脂血症)を引き起こす危険因子を生活から遠ざけて、まずは積極的に食事や生活習慣などの日常生活を改善する対策が必要です。
■脂質異常症の原因:食生活
高カロリーの食事、コレステロール・飽和脂肪酸・糖質などを多く含む食べ物、といった食生活はコレステロールや中性脂肪の増加につながります。心当たりがあるなら、食生活を見直しましょう。
■脂質異常症の原因:運動不足
運動不足は脂質の代謝能力を低下させますから、中性脂肪を蓄積して肥満の原因になります。運動は、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)を減らして肥満解消になります。適度な運動を生活に取り入れましょう。
■脂質異常症の原因:ストレスや不規則な生活
強いストレスや長いストレスはホルモン分泌を狂わせて、血液中のコレステロールや中性脂肪を増やし血圧を上げて、血液中の脂質が血管壁に沈着する動脈硬化を促進します。自分なりのストレス解消法を工夫して、規則正しい生活を心掛けましょう。
■脂質異常症の原因:喫煙
煙草(タバコ)は善玉コレステロール(HDL)を減らして悪玉コレステロール(LDL)を超悪玉(スモールデンスLDL)にするといわれています。脂質異常症(高脂血症)といわれたら、必ず煙草(タバコ)はやめましょう。
■脂質異常症の原因:アルコールの飲みすぎ
適量のアルコールはストレス解消になりますが、アルコールの飲み過ぎは血液中の中性脂肪(トリグリセライド)を増やします。アルコールはほどほどにしましょう。
脂質異常症と遺伝
遺伝子の異常によって脂質異常症(高脂血症)になりやすい人がいます。遺伝的要素が強く、家族に同じタイプの脂質異常症(高脂血症)が見られることから、家族性脂質異常症と呼ばれます。先天的遺伝的な要因が原因であるために、生活習慣に問題がなくとも起こりますし、治療が難しいことも多いようです。家族性脂質異常症にはいくつかの病型があり、発症頻度が異なります。家族性複合型高脂血症はおよそ100人に1人といわれています。次に多い病型が家族性高コレステロール血症(FH、Familial Hypercholesterolemia)です。家族性高コレステロール血症(FH)の特徴としては、高コレステロール血症、アキレス腱肥厚、黄色腫、冠動脈硬化症(狭心症や心筋梗塞)があります。家族性高コレステロール血症の原因は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を血液中から細胞内に取り込むLDL受容体の遺伝的異常です。家族性高コレステロール血症にはヘテロ型とホモ型があり、片方の親だけから異常な遺伝子を受け継いだ場合がヘテロ型、両方から受け継いだ場合がホモ型です。ヘテロ型の家族性高コレステロール血症はおよそ500人に1人の割合で発症します。ホモ型の家族性高コレステロール血症は100万人に1人と稀です。ホモ型はヘテロ型よりも重症で、5歳~30歳までに冠動脈硬化症(狭心症や心筋梗塞)を起こすことも多いようです。
原発性高脂血症の種類としては、原発性高カイロミクロン血症(家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症・アポリポ蛋白CII欠損症・原発性V型高脂血症・原因不明の高カイロミクロン血症)、原発性高コレステロール血症(家族性高コレステロール血症・家族性複合型高脂血症・特発性高コレステロール血症・内因性高トリグリセリド血症・家族性IV型高脂血症・特発性高トリグリセリド血症)、家族性III型高脂血症(原発性高HDL-コレステロール血症)があります。
脂質異常症と高齢者
血液中のコレステロールや中性脂肪(TG、トリグリセライド)が異常値を示す脂質異常症(高脂血症や低脂血症などの脂質代謝異常症)は、動脈硬化の危険因子のひとつです。高齢者は成人よりも動脈硬化性疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)の絶対リスクが高い状態であることは明らかです。成人と同じく前期高齢者(65歳以上75歳未満)の冠動脈疾患(CAD)の危険因子として高LDLコレステロール血症(LDL-C)が挙げられます。前期高齢者の治療においては、脂質低下療法の効果が成人と同等または更に高いと考えられており、CAD発症予防として、成人と同じ脂質異常症管理基準を適用しても良いと考えられています。後期高齢者(75歳以上)や超高齢者では、栄養の吸収が悪い・消化管の活動低下・偏食などから栄養状態が不良になりやすいため、脂質異常症としては低HDLコレステロール血症がよく見られます。
高齢者(男女ともに)においても脂質低下療法がCAD発症予防に有用といわれていますが、後期高齢者や超高齢者の脂質異常症治療においては、治療の必要性・治療開始時期・目標値などに関してはっきりとしたエビデンスが得られておらず、個々の患者の病態を十分検討して主治医の判断のもとに柔軟な対応が必要と考えられているようです。日本動脈硬化学会では「後期高齢者の高LDLコレステロール血症治療に関する意義は明らかでなく、主治医の判断で個々の患者に対応する」とされています。
※動脈硬化性疾患:動脈硬化性疾患とは、脳動脈(脳梗塞、脳出血)、冠動脈(心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患)、大動脈(大動脈瘤、大動脈解離)、腎動脈(腎硬化症やそれによる腎不全)、末梢動脈(閉塞性動脈硬化症 )など血管の病気の総称です。
※冠動脈疾患(CAD:Coronary Heart Disease):冠動脈疾患とは、心臓血管の病気です。動脈壁に徐々に蓄積した脂肪(コレステロール)によって冠動脈が狭窄あるいは閉塞する疾患です。
脂質異常症と女性
女性の脂質異常症(高脂血症)は閉経を機に増加し、動脈硬化性疾患のリスクも高まります。脂質異常症(高脂血症)は、男性では成人で現れはじめて50代以降多くなります。女性では50歳代になるまでは少ないのですが、それ以後に急激に増えて男性よりも多くなります。この男女の脂質異常症(高脂血症)の違いの原因は、女性特有のエストロゲン(卵胞ホルモン)にあります。エストロゲンには、肝臓の酵素に働きかけて血液中のLDLコレステロールの増加を抑制し、肝臓でのHDLコレステロールの合成を促がす働きがありますから、閉経前は男性のように動脈硬化性疾患のリスクが低いのです。ところが、閉経後はエストロゲンが激減することで、LDLコレステロールや中性脂肪が増加して、動脈硬化性疾患のリスクが高まります。一般的に女性のLDLコレステロール(LDL-C)値は40歳代後半から上昇して、閉経後に男性を追い越し、更に男性より高値を持続します。そのため、女性の冠動脈疾患(CAD)発症リスクは閉経後に高まり、高齢期にかけて増加し続けます。女性のHDLコレステロール値は高いことが多いので、総コレステロール値が高くとも、必ずしもLDL-Cも高値とは限りません。閉経前女性の脂質異常症に対しては、家族性高コレステロール血症や脂質異常症以外の病気(高血圧や糖尿病など)の合併など複数の危険因子があるケースを除いては、生活習慣の改善が優先的に行われます。閉経後女性の脂質異常症では、まずは生活習慣改善が推奨されますが、危険因子を十分考慮して薬物療法も検討されます。
日本においては、食生活の欧米化、運動不足、喫煙、長寿による高齢化社会で、動脈硬化に繋がる危険因子が懸念されます。女性も若いうちから生活習慣を見直して脂質異常症(高脂血症)予防対策を行って、少しでも動脈硬化の危険因子を減らすことが重要です。
※LDLコレステロール(LDL-C):俗称として善玉コレステロールと呼ばれています。
※トリグリセライド(TG):中性脂肪の殆どがトリグリセライド(TG)です。
※HDLコレステロール(HDL-C):俗称として悪玉コレステロールと呼ばれています。
脂質異常症と喫煙
脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙が動脈硬化の四大リスクファクター(危険因子)です。喫煙(たばこ)は脂質異常症と深い関係にあります。ニコチンは中性脂肪の原料になる遊離脂肪酸を増やしますし、交感神経を刺激して血圧を上げ、血管を収縮させて血流を悪くして、動脈硬化を進める作用があります。一酸化炭素は赤血球のヘモグロビンと結びついて血液が酸素を運搬する機能を阻害したり、血管壁が傷付きやすくします。喫煙(タバコ)によって血液中のコレステロールが酸化されてアテローム性動脈硬化症(粥状硬化症)が進行することや、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減少させて、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やすことが分かっています。喫煙自体が血栓形成性を高めるともいわれています。
喫煙者にガン(癌)・心臓病・脳卒中・肺気腫・喘息・歯周病といった病気の罹患率や死亡率などが高いことや、これら病気の原因と喫煙(たばこ)が関係していることが疫学的にも指摘されており、喫煙が引き起こす様々な健康への悪影響によって喫煙者の余命が非喫煙者よりも短いともいわれています。そして、喫煙者本人だけでなく、副流煙(タバコの煙)による受動喫煙の場合でも、喫煙者と同じまたはそれ以上のリスクがあるともいわれていますから要注意です。もし喫煙者ならば、1日も早く禁煙することをお勧めします。タバコ依存の原因は、タバコ煙に含まれるニコチンです。ニコチン依存は病気です。自力で禁煙できないならば、禁煙グッズや禁煙プログラムを利用するのもよいですし、病院に行くのもよいです。自分に合った禁煙方法をみつけてください。
脂質異常症と肥満
肥満としては、内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満があります。内臓脂肪型肥満は、脂質異常症(高脂血症)や高血圧や糖尿病などを合併しやすく、動脈硬化との関連性が高いとされています。肥満 (特に内臓脂肪型肥満) は動脈硬化の危険因子としての脂質異常症(高脂血症)・高血圧症・糖尿病などのベース(素地)になっているのです。つまり、肥満の人はこれらの疾患を複数もつ場合が多いという事です。このことから、肥満に加えて、脂質異常・血圧高値・耐糖能異常のうち2つに該当する状態を、メタボリックシンドロームとよばれる疾患として定義しています。
肥満とは脂肪組織が過剰に蓄積された状態です。肥満の場合は、脂肪細胞から流出した脂肪酸を原料にして中性脂肪が合成され、血液中の中性脂肪が増えます。肥満度指数(BMI) が25を超えると合併症の発症頻度が高くなります。脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高血圧、心疾患(心不全や虚血性心疾患)、脳卒中、睡眠時無呼吸症、癌、痛風などです。このように、肥満は他の生活習慣病の原因にもなりますから減量が必要です。メタボリックシンドローム予防に生活習慣病である脂質異常症の予防は重要で、そのベースになっている肥満解消が重要になります。肥満でなくとも、適正体重・適正エネルギー量を知って、肥満にならない食生活や生活習慣を身に付けておくことが大切です。
※肥満が原因になっている疾患(合併症)が肥満の程度と相関しないため、単なる肥満と区別して、医学的治療が必要な肥満を肥満症と診断しています。
脂質異常症と糖尿病
脂質異常症(高脂血症)を合併している糖尿病患者が多く見られます。糖尿病や脂質異常症(高脂血症)はそれぞれの病気単独でも動脈硬化を起こしやすいのですが、糖尿病と脂質異常症(高脂血症)を合併すると、動脈硬化のリスクが増大します。糖尿病で合併しやすい脂質異常症(高脂血症)のタイプは、中性脂肪値(TG、トリグリセライド)が高く(150 mg/dL以上)、HDL(善玉)コレステロール値が低い(40 mg/dL未満)といわれています。糖尿病に合併しやすいのは高トリグリセライド血症ですが、高 LDLコレステロール血症を合併することもあります。糖尿病に罹ると膵臓から分泌されるインスリンの作用不足で脂質代謝が妨げられて、血液中の中性脂肪が異常に増加することになります。中性脂肪が増えると、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減ってLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増加し、脂質異常症(高脂血症)が大変進行しやすい状態になり、動脈硬化の進行が促がされます。また、糖尿病で血糖値が高いことで、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が酸化されやすい状態になり、動脈硬化が一層進んでしまいます。糖尿病患者における脂質異常症は、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患(CAD)や脳梗塞のリスク要因ですから、血糖値など個別に見るのではなく、トータルでコントロールする必要があるようです。
※糖尿病の定義: 糖尿病とは、インスリン作用の絶対的または相対的不足により引き起こされる慢性の高血糖状態を主な特徴として、様々な病態をもつ代謝疾患群です。糖尿病と判定するためには、空腹時血糖値、75gOGTT2時間値、随時血糖値の検査の結果における糖代謝異常の程度により診断されます。
※糖尿病の症状: 糖尿病の典型的な自覚症状は口渇・多飲・多尿・体重減少などですが、糖尿病の多くが殆ど自覚症状がありません。糖尿病は合併症の病気ともいえます。糖尿病の3大合併症と呼ばれる糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害をはじめ、感染症や動脈硬化など様々です。
脂質異常症と高血圧
脂質異常症(高脂血症)は動脈硬化の危険因子で、高血圧を合併することが多い病気です。高血圧症とは、正常基準値を超えた血圧値が慢性的に続く状態です。高血圧と動脈硬化は相互に危険因子になって血管の老化を促進します。そして、高血圧が長期間続くと、脳・心臓・腎臓・目などの臓器にも甚大な悪影響を及ぼすようになります。高血圧と脂質異常症(高脂血症)は動脈硬化性疾患を引き起こす危険因子になる病気として注意が必要であるにもかかわらず、単独では軽く見られがちのようです。脂質異常症(高脂血症)に合併症で高血圧があると、脳卒中や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)を起こす確率が更に高まりますから、一層の注意が必要になる病気と認識することが重要です。高血圧と脂質異常症(高脂血症)は互いに危険因子となって動脈硬化を促進させる関係にあります。血圧が高い状態が続くと、常に血管に余計な圧力がかかるため、血管壁が傷つきやすくなっています。脂質異常症(高脂血症)が重なると、弱くなって傷付いた血管の内壁に増殖した悪玉コレステロールや中性脂肪が入り込み、血管はもろく細くなっていきます。すると、更に血液が血管に圧力をかけて高血圧になるといった悪循環が生じます。肥満を解消することが、脂質異常症(高脂血症)と高血圧の両方の改善に繋がることがわかっています。脂質異常症(高脂血症)とその合併症を改善するには、まず生活習慣の見直しです。
脂質異常症と胆石症
動脈硬化とは無関係に脂質異常症(高脂血症)の人に合併が多く見られる病気に胆石症があります。胆石症とは、胆汁が消化管の胆道(胆嚢や胆管)内で固まって結石を形成する病気です。胆石症は結石ができる場所によって胆嚢結石症・総胆管結石症・肝内結石に分けられます。胆石症のおよそ9割が胆嚢結石症です。胆嚢結石症が一番発症率の高い胆石であるため、胆石といった場合は。胆嚢結石症を指すことが一般的です。脂質異常症(高脂血症)、特に高トリグリセリド血症は胆嚢結石(いわゆる胆石)形成に関連するといわれています。また、胆石にはコレステロール性結石と色素系結石(ビリルビンカルシウム石と黒色石)があります。日本の食生活が欧米化するまでは、ビリルビンカルシウム石が一番多い胆石症でしたが、近年はコレステロールが主成分のコレステロール胆石が増え、胆石全体の7割以上を占めています。コレステロール胆石の原因は、高脂肪の食生活や慢性的なストレスといった生活習慣で、ビリルビン胆石の主な原因は、溶血性疾患や細菌感染などが挙げられます。胆石症の症状としては、主にみぞおち・右脇腹・背中・腰などの痛みや、嘔吐や胸部の痛みなどです。突然の激しい右上腹部の痛みで胆石が見つかるケースが多いのですが、胆石を持っていても殆ど症状がない無症状胆石が多いです。尚、胆嚢(胆のう)や胆管の炎症で高熱や黄疸(黄だん)症状が現れることもあります。このように胆石に黄疸や発熱を伴う場合は至急病院を受診する必要があります。
脂質異常症と大動脈瘤
大動脈瘤とは、大動脈が局所的に内圧に耐えられず瘤(こぶ)のように膨らむ病気です。大動脈瘤の危険因子としては、動脈硬化・高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・喫煙などの循環器系の病気に共通する危険因子が挙げられます。大動脈瘤の最大の原因は動脈硬化です。動脈硬化が進行すると、動脈の血管壁は次第に脆く弱い状態になって、高い血圧に耐えられなくなります。この弱くなった動脈壁の一部が変形して瘤(こぶ)状に拡張した状態が大動脈瘤です。大動脈瘤ができる部位によって、胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤に分けられますが、大動脈瘤の殆どが腹部大動脈瘤です。大動脈瘤の症状は、大動脈瘤の大きさや部位、原因になっている基礎疾患によって様々ですが、大動脈瘤の大きさは徐々に進行しますから、初期は殆ど症状がありません。特に胸部大動脈は自覚症状に乏しく、破裂しない限り症状が現われないことが多いようです。腹部大動脈瘤では、臍(へそ)周辺に触れることで瘤(こぶ)が拍動するのを認めて腹部大動脈瘤が発見されることが多いのですが、痛みを伴うことは稀ですので放置されることが多いようです。胸部大動脈瘤が破裂すると胸や背中の痛みや喀血などがあることが多く、腹部大動脈瘤が破裂すると腹痛や腰痛や膨満感が必ず起こります。大動脈瘤が破裂すると殆どのケースで痛みを生じ、大動脈瘤の出血でショック状態に陥り生死に関わることも稀ではありません。瘤(こぶ)がある程度大きくなった場合は手術によって除去する必要があります。瘤(こぶ)の予防対策として、脂質異常症(高脂血症)などの危険因子を避けることが大切です。
閉塞性動脈硬化症とは
閉塞性動脈硬化症とは、四肢(主に下肢)に血行障害が起こっている状態で、大動脈瘤と同じ循環器系の病気です。閉塞性動脈硬化症の原因は動脈硬化で、基礎疾患として糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、高血圧などの生活習慣病があります。動脈硬化は全身の血管に起こるのですが、閉塞性動脈硬化症の場合は腹部から下肢の動脈(大動脈下部から大腿動脈の範囲)によく見られる動脈硬化症です。閉塞性動脈硬化症である場合は、下肢の動脈だけでなく、全身の血管にも動脈硬化を起こしている可能性が大きく、冠動脈疾患(虚血性心疾患とよばれる狭心症や心筋梗塞)や脳血管障害を合併しているケースも多く見られます。閉塞性動脈硬化症の症状としては、しびれや冷感に始まり、間欠性跛行とよばれる、歩行中に下腿(ふるらはぎ)の筋肉が痛くなり、立ち止まると痛みが和らぐ症状が現われてきます。閉塞性動脈硬化症が更に進行して安静時に疼痛が現われる時期には、足の潰瘍や壊死が起こりやすくなるため必ず治療する必要が生じます。閉塞性動脈硬化症の予防対策は、食生活を改善し適度な運動などをして、脂質異常症(高脂血症)などの危険因子を取り除くことです。
※閉塞性動脈硬化症(ASO): arteriosclerosis obliterans
高尿酸血症・痛風とは
高尿酸血症(痛風)では脂質異常症(高脂血症)を合併していることが多いといわれています。好発年齢は30-60歳代で、9割以上が男性です。血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が高尿酸血症です。この状態が更に進行して急性関節炎発作の症状が起きた時に、痛風といわれます。痛風の激しい耐え難い「痛み」に注目が集まる傾向にありますが、本当に注目すべきは高尿酸血症(痛風)の合併症です。肥満度が大きくなるほどに高尿酸血症の頻度も増加します。そして、耐糖能異常(糖尿病)、高トリグリセリド血症(高脂血症)、高血圧などの合併頻度も多くなります。高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が高くなった状態です。高尿酸血症には尿酸の産生過剰型と排泄低下型(腎型)があり、およそ9割が排泄低下型です。高尿酸血症が進行すると痛風発作とよばれる激しい痛みを伴う炎症性関節炎の急性発作の症状が現われますが、他にも、皮膚症状として皮下に痛風結節できたり、腎臓や尿路に尿酸結晶が溜まることで、尿路結石症を生じやすくなったり、腎機能障害(腎不全などの 腎臓病) をきたします。尿酸結晶による腎障害は痛風腎と呼ばれます。
高尿酸血症(痛風)の原因である尿酸はプリン体から作られます。遺伝的に細胞の代謝機構に問題があったり、プリン体(プリンヌクレオチド)が多い食事を好んで食べていると尿酸が産生過剰になって尿酸値が上昇します。アルコール(特にビール)の多飲でも、尿酸の産生過剰が起こります。高尿酸血症(痛風)の治療の基本は生活習慣の見直しです。肥満の解消が大切で、カロリ-制限、高蛋白食制限、アルコール制限が特に重要です。アルカリ食品や水分を充分に摂取することで尿をアルカリ化したり、ストレスを避けることも大切です。

